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北海道大学 情報科学研究科 メディアダイナミクス研究室 Laboratory of Media Dynamics

世界に羽ばたく先輩たち

今 宏史さん

今 宏史さん2007年度卒業
現在の職場:KDDI France SAS (KDDI株式会社から出向中)

フランスのビジネスシーンでも
研究室時代に培った経験が大いに役立っています

新しいテーマを追求し、新たな世界を開く喜び

メディアダイナミクス研究室では、サッカーの戦術上重要な要素であるパスに注目し、映像より得られる選手の位置関係から、有効なパスコースを自動で推定する手法を研究していました。これにより、優勢に試合を進めているチームや高度なプレーをしている選手などをコンピュータが理解できるようになります。研究では、戦術的にサッカー映像を解析し、試合の優勢度やチームの戦術、その進め方などをユーザに提示し、よりサッカー観戦を楽しめる環境を作りたいと考えていました。
このような研究は既存の成果が非常に少なかったため、先生と様々な新しい仮説を議論して検証を繰り返しました。多くの失敗をする中で、ようやくパスコースの分析というひとつの形ができ、企業の方にも見に来ていただけたことが嬉しかったです。

研究室ではそれぞれの学生が多岐に渡るテーマを持っていて、そのことが研究室全体の研究の質を高めていたと思います。ゼミを通して異なる分野の研究手法を知ったり、議論したりすることで視野を広くすることができました。また、国際会議や国内の会議への投稿、展示会への出展などを行っていたので、皆が同じ目標に向かって積極的に活動していました。そうした環境で学生時代を送ることができたことは、とてもよかったと感じています。

研究室時代の「当たり前」が、現在の自分の基盤に

現在はKDDI FRANCEに出向し、フランスで生活しています。日本でKDDIというと携帯電話や固定通信などの印象が強いと思いますが、海外ではサーバやPCなども含め、お客様に対して総合的なITサービスを提供するビジネスを行っています。
海外で働くことを意識したのは、研究室時代だったと思います。海外の文献を読み、国際学会に投稿をする過程を通し、当たり前のように「いつか世界で活躍したい」と考えるようになりました。海外では、市場環境やお客様・パートナー様のビジネスに対する考え方などで日本と異なる点が多く、それを理解し、その国にあった商談の進め方やサービスの提供をしていく必要があります。難しい面もありますが、学ぶべき点も非常に多く、異なる文化・環境の中でビジネスをすることは大きな魅力でもあります。

実際の業務においても研究室でのノウハウが生きています。例えば、お客様の市場環境や社内環境を分析し、仮説を立てて最適なソリューションを考えるときの「分析・仮説・考案」というプロセスは、研究のプロセスと類似しており、研究室で学んだ考え方が非常に役立っています。また、納期に向けて計画的にプロジェクトを進めることも、学会発表に向けて研究を進めていた経験から、自然にできるようになっていました。

海外で生活していると、日本の技術や品質の高さは世界に誇れるものだと実感します。一方で、世界で使われている製品やサービスは、潜在的な能力に対してまだ少ないと感じます。今後は、通信会社という枠に捉われず、様々な業種の企業と連携し、日本の高品質な製品やサービスを全世界に届け、世界中の人が便利に快適に暮らせる社会を作ることに貢献したいと考えています。

加賀 陽介さん

加賀 陽介さん2008年度卒業
現在の職場:株式会社日立製作所 研究開発グループ 基礎研究センター

就職後も研究室と近い分野で研究を行い、
それを製品化し、
社会に貢献できるやりがいを実感しています

活気にあふれ、議論が絶えず、ともに成長し合える環境

メディアダイナミクス研究室では、監視カメラなどで撮像された動画像を認識し、歩行者を検出する技術を研究していました。このような技術を用いることで、監視カメラの映像から不審者を自動的に抽出し、アラートを出すシステムを開発できます。この研究は、データの撮影、画像処理による特徴量抽出、パターン認識による歩行者識別から構成されます。こうした流れを通し、研究そのものの進め方と共に、技術的な基礎知識を身につけることができました。

研究室はいつも活気があり、先輩後輩に関係なく議論しあえる雰囲気がありました。こうした環境のおかげで、研究について深く考え、人との議論を通して研究をブラッシュアップしていくスキルを習得できたと思います。一方、ゼミでの研究指導や論文指導は非常に厳しく、学会参加や論文執筆の機会も多いため、特に論理的に明快な文章を書くことに関してはかなり成長できたと思います。文章力はどんな職種においても必要とされるスキルであり、自分にとって大きな武器となっています。

また、研究室では学会発表や学外のプロジェクトにも積極的に参加しており、私自身も沖縄やラスベガスの国際学会や国家プロジェクトに参加し、学外の方と議論する機会を得るなど貴重な経験を積みました。そのほか、パソコンやネットワークなどのITインフラの管理を自分たちで行ったり、学会のWebシステムを管理したりといったタスクを研究と並行して行っていましたが、こうした活動を通して得た知識は就職後も非常に役立っています。

研究成果を製品に仕上げ、安全安心な社会に貢献

現在は、「生体認証」に関する研究開発に取り組んでいます。生体認証は指紋や静脈といった身体的な特徴から個人を特定する技術で、近年様々な場面で普及が進んでいます。ATMの静脈センサやスマートフォンの指紋センサもその一つです。日立製作所では「指静脈認証」を中心に事業を行っており、ATMや企業向けのシステムで高いシェアを持っています。
生体認証は、画像のセンシング、画像処理による特徴量抽出、パターン認識による個人識別から構成され、必要とされる要素技術は研究室で行っていた歩行者検出と全く同じです。現在の職場では、技術的に研究室と近い分野で研究を行い、それを製品に仕上げていくことができるので非常にやりがいを感じています。

社会へのICTの普及により、身の回りのシステムはどんどん便利になっています。しかし、一方で新たな犯罪やテロのリスクも増しています。危険性があるシステムは誰にも使ってもらえませんから、生体認証などのセキュリティ技術を用いて安全性を確保する必要があります。
さらに、生体認証は安全性を向上させるだけでなく、サービスの利便性を高めたり、新たなサービスを生み出したりする使い方もできます。生体認証によって、買い物やドアの開錠、行政手続きなど、身の回りの様々なサービスが手ぶらで実用化できるかもしれません。そんな生活を想像すると、ワクワクしてきませんか? 自分が開発した技術を普及させ、もっと便利で、かつ安全安心な社会に貢献することが、現在の私の目標です。

小林 亜令さん

1998年度卒業
現在の職場:株式会社KDDI研究所

いつかこの研究室のOB・OGで、
企業を越えたプロジェクトを実現してみたい

「研究の進め方」を学んだことが、今も大きな資産

メディアダイナミクス研究室では、遺伝的アルゴリズムを用いたフラクタルブロック符号化法の研究を行っていました。「フラクタル画像圧縮」とは、画像の自己相似性を用いて符号量を低減する手法ですが、画像内のどの領域間が相似しているかを高速に探索するために、遺伝的アルゴリズムを用いて課題解消を図る研究です。
今の仕事についたきっかけは、メディアダイナミクス研究室で学んだ画像処理技術が、光海底ケーブルを通じて世界中のコミュニケーションに使われることを夢見たからでした。当時のKDDに入社し、その後にKDDIとなってモバイルコミュニケーションが主軸事業となり、その夢が実現する可能性がより広がりました。さらに今は、シーズを産み出す基礎研究だけでなく、技術開発や事業企画、事業開発といった幅広い業務に携われることが最大の魅力です。
現在は、通信キャリアの将来事業を支える技術の研究開発を行っています。私の場合は、5年後くらい先の事業を想定した研究テーマが多く、最近では、大規模データ解析、センサデータマイニング、拡張現実感(AR)に関する研究を行っています。
また、研究成果を、事業企画や事業戦略に活かしたり、最近では、当社TV CM「驚きを常識に」シリーズのようなプロモーションにも研究成果を使ったりもしています。具体的な研究テーマは学生時代とは違いますが、研究の進め方には共通部分が非常に多く、その基礎となる部分を大学時代にきっちり学ぶことができたのが、今の自分にとって、とても大きな資産になっています。

「この研究室を選んでよかった」と思える雰囲気は、卒業後も健在

メディアダイナミクス研究室は、学生間の縦や横のつながりが昔から非常に強い印象があります。
私が入った3年生の頃には、毎日、研究室全員で昼食に行く文化ができていましたし、研究室内のコミュニケーションが活発で、ゼミの時間外でもテーマの異なる先輩からアドバイスもらうこともありました。他にそんな研究室はなかったので、とても衝撃的で、「この研究室選んでよかった」と思ったことを覚えています。その流れは卒業後もずっと続いていて、研究室のOB・OGは東京で年2回ほど、新社会人を囲んで懇親会を行っています。メディアダイナミクスのメンバーは仲が良いだけでなく、現在、様々な魅力的な企業で活躍しているので、いつか研究室OB・OGが集まって、企業横断プロジェクトをやってみたいと思います。
また、これからの時代はもっと理系業務(研究、技術開発)と文系業務(マーケティング、経営、セールス)が、密に連携すべきだと感じています。理系と文系が一体となって全体の最適化を行い、研究や事業を展開できる組織を作りたい。それがコミュニケーションの発展につながると信じています。
そのために、まずは自分自身が工学博士と経営学修士(MBA)の両方を取得することが現在の目標で、少し前から経営学の大学院に通いはじめたところです。

二反田 直己さん

2007年度卒業
現在の職場:株式会社デンソー 走行安全システム技術部

企業の研究開発においても
取り組むアプローチは学生時代と変わりません

研究成果を見本市にも出展し、成長を実感

メディアダイナミクス研究室では、音響信号のクラスタリングに関する研究を行っていました。

近年はハードディスクレコーダやブルーレイディスクなどの普及で、テレビ番組を大量に録画し、後で好きな所だけ視聴するという使い方ができるようになっています。たとえば、好きなアーティストが歌っているシーンだけ見るといった使い方です。こうした使い方の操作性を向上するには、見たいシーンを簡単に選択・頭出しができるように映像信号を自動で解析し、インデキシング(事前に索引ファイルを作成すること)する技術が必要になります。

先ほどの例だと、「特定のアーティストが写っている」という画像インデックスと、「歌っている」という音響インデックスの2つが必要になります。私の研究は、後者の「歌っている」という音響のインデックスを自動で分類するものでした。実際に、音楽の類似性を研究していた学生と研究成果を統合し、類似映像・楽曲の推薦システム「Easy Finder」として、国内最大の家電見本市であるCEATEC Japanに出展させていただきました。これは経済産業省の「情報大航海プロジェクト」の一環でしたが、研究成果を企業や一般の方にも知ってもらえる貴重な機会で、社会人の方とも交流でき、自分の世界が大きく広がったと感じています。

研究室での経験が、企業でもそのまま活きる

現在は、自動車部品メーカーで認識アルゴリズムの開発を担当しています。最近の自動車は、他の車両や人に衝突しそうになると自動でブレーキをかける「予防安全システム」が搭載されていますが、私の仕事は車載センサの、特にカメラを中心とした認識アルゴリズムの開発です。

研究開発で扱うデータは、学生時代と比べると桁違いの量になります。自動車は昼も夜も、晴れでも雨でも雪でも関係なく走りますし、場所も全世界です。当然、研究開発に使う画像も様々な条件下のデータが大量に必要で、車にカメラを搭載し、世界中を何万キロも走ってデータを収集します。こうした大量のデータを眺めていると、内心、「これを認識するのは難しいなぁ…」と思うこともあります。それでも、取り組むアプローチは学生時代と何ら変わりません。データをよく観察し、仮説を立て、実験により検証し、効果と課題を確認して次の対策を打つ。この繰り返しです。

また、メディアダイナミクス研究室では学生が日々の研究成果を学術論文にまとめ、国内外で発表していますが、卒業後企業に就職し、周りの同期と自分を比べてみると、このとき培った経験の大きさを実感できると思います。たとえば、業務報告書を書くとき、業務内容を上司や役員に説明するときは、業務内容や成果を整理し、正当性を裏付ける十分なデータを揃え、相手を説得させる魅力的なプレゼンが必要となりますが、これは研究成果を論文にまとめ、学会で発表するプロセスとまったく一緒です。メディアダイナミクス研究室での研究活動が、今の私の仕事の進め方の根幹に影響していることは間違いありません。

今は自動車業界に限らず、各分野のメーカーが開発スピードをどんどん早めていて、日本国内を見ているだけでは取り残されてしまいます。学術研究でも同じことが言えるかも知れません。だからこそ、世界に目を向け、自分の力を最大限に伸ばし、世界中の人に貢献できるものを作っていきたいと思います。

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