文字サイズ

北海道大学 情報科学研究科 メディアダイナミクス研究室 Laboratory of Media Dynamics

メディアダイナミクス研究室とは


マルチメディア技術を駆使して知識獲得のプロセスを探る

大学院情報科学研究科(工学部情報エレクトロニクス学科) 教授 長谷山 美紀

専門分野: 画像・映像処理,音声処理,音楽処理,知識創出
研究のキーワード:画像復元、画像認識、映像意味理解、画像・映像検索、音楽検索

出身高校:札幌南高校 最終学歴:北海道大学博士課程

何を目指しているのですか?

画像や映像を人間のように理解する次世代のマルチメディアシステムの実現を目指しています。高速インターネット網が拡大し、大容量蓄積メディアが普及した現在、私たちの周りには画像映像等のディジタルデータが溢れています。このようなデータは、世界中で益々増加することが予想され、2020年には、35ゼタバイト(ゼタバイトは、1021バイト)のデータが生み出されると言われています。このデータがどれほどの量であるかを想像して頂くために、全てのデータをDVDに保存して積み上げたと仮定すると、火星までの距離の半分にもなります。そして、実は、すでに地球上で我々人間が生み出しているデータの総量が、世界で利用可能なストレージ(ハードディスクやUSBメモリ等のデータを記録して保存する装置)の総量を上回っていることが報告されています。つまり、大量のデータの中に大切な情報が含まれていても保存されることなく捨てられてしまっているのです。私たちの大切な情報を保存するために、必要な情報を自動で探し出す科学技術が必要です。私が目指している『画像や映像を人間のように理解するシステムの実現』も、そのような科学技術の創出のために行っています。

どんなことが実現されているのですか?

『画像や映像を人間のように理解するシステム』を実現するためには、人間の視覚特性や聴覚特性を基盤とした認識手法や映像に含まれる音楽音声信号の解析、さらには復元手法や次世代符号化方式等、様々な手法を構築する必要があります(図1および図2に実現の例を示します)。また、このような手法の構築と並行して、人間が外界から得る画像や映像、音声等あらゆる信号から、どのようにして知識を得るかを解明する必要があります。そこで、マルチメディア信号処理の研究の立場から人間の知識獲得のプロセスを解明しています。

図1 画像認識の例 (顔画像認識)

図2 画像復元の例 (鳥の背景に存在する領域を推定した結果)

例えば、5年前に開発した画像検索システム(図3および図4)は、人間がどのようにして望む画像を手に入れるかを考えたものです。一般の画像検索システムは、キーワードを入力して検索しますが、このシステムは、そのようなキーワードを必要としません。システムは予め各画像にその特徴を表す数字のタグを自動で付与し、ユーザが検索を始めると、画像同士が「コミュニケーション」しているかのように動き出します。画像に付与された数字のタグに基づき、類似しているものは近くに、異なるものは遠くに配置されて行きます。動いている大量の画像に人間が向き合うことで、自分自身に内在する知識や記憶が呼び覚まされて、今まで気づかなかった画像の関連性に気づき、本当に欲しい画像を手に入れることができます。

図3 連想型画像検索システム (Image Vortex)

図4 俯瞰型画像検索システム
画像検索システムImage Vortexは実用化され、
Image Cruiserとして利用されています(http://imagecruiser.jp/)。

また、画像だけでなく、映像についてもキーワードを使わず感覚的に探せる連想型映像検索エンジン (図5)を開発し、音楽、静止画像、映像を個人の好みに合わせて自在に入手できる異種メディア横断型検索エンジンも開発しました(図6)。これまでできなかった、画像から音楽を探したり、逆に音楽から画像を探したり、さらには、自分自身に似ているユーザや全く好みが違っている他のユーザからもネットワークを通して自動で推薦を受けることができます。人間は新しい発見をする時に感動や喜びを覚えます。近い将来、画像や映像、音楽等の世界中のあらゆる情報から、予想外の発見ができる検索システムが生まれ、皆さんの生活を豊かにしてくれると考えています。

図5 連想型映像検索エンジン (Video Vortex)

図6 異種メディア横断型検索エンジン (Tri-Media Vortex)

研究者としての喜びは何ですか?

私が行っている、知識獲得のプロセスを分析する研究は、言い換えると、人間にどのようにすれば「気づき」や「きっかけ」を与えることができるかを探究していることになります。得られた知見で多くの人を支援できれば、社会の生産性向上につながると考えています。知的に探究し、学問の発展に貢献するのはもちろんですが、それが生活や産業に活かされ、社会に貢献することが、私たち研究者にとって大きな励みになります。自分自身で生み出した研究成果が皆さんの生活を豊かにするために役立つことが私たち研究者の喜びです。

Back to Top ↑