COLLABORATION WITH MEDICAL SCIENCE FIELDS 医学

医学 -先端的画像・映像認識技術により、次世代医療の社会実装を実現-

世界に先駆けて超高齢社会に突入した日本では、医師不足・医療費増大の慢性的課題を抱えており、機械学習を応用した診断支援技術の確立による医療の効率化が急務となっています。AI技術の医療応用は期待が高いものの、臨床現場への導入に向けて、AIの信頼性向上・学習データ量の確保・セキュリティおよび匿名性の担保等、様々な課題をクリアする必要があります。メディアダイナミクス研究室では、高度な画像・映像認識技術をコア技術として、医療分野に残存する課題解決に挑戦し、AIを基軸とした次世代医療の社会実装に世界に先駆けて取り組んでいます。

高精度胃がんリスク識別AI

胃がんは、数あるがんの中でも死亡率の高いがんの一つです。主な原因は、ピロリ菌の感染による胃の萎縮とされており、ピロリ菌が生息する胃は、胃がんリスクが高くなることが知られています。胃がんリスクが高い状態とされる慢性萎縮性胃炎の診断は、高度なスキルと豊富な経験が必要とされるため、AIに基づく診断支援技術の確立が求められています。
メディアダイナミクス研究室では、X線画像から胃がんリスクを自動で判定可能とするAIを構築しました。一般に判読医の読影精度は、90%程度であると報告されていますが、本研究で構築したAIでは、判定精度が96%以上であり、判読医と同等以上の精度を達成しました。

AIの判定根拠の可視化

左図に示す赤色の領域は、AIが判定時に重要と考えた領域です。一方、青色の領域は判定に影響しなかった領域です.胃の内部領域に赤色の領域が位置しています。判読医は、この可視化結果を参考にAI判定の信頼性を判断することができため、XAIはAIの信頼性向上に貢献すると考えられています。

生成画像を用いたAIの効率的学習

医療分野では、個人情報保護の観点から医用画像データを外部に持ち出すことが困難であり、各医療施設で独立したデータのみからAIを構築しなければならない場合があります。これは、AIの学習用データが不足するという問題を引き起こします。
メディアダイナミクス研究室では、GenerativeAdversarialNetwork (GAN) と呼ばれる技術を用いて、疾患に関連する所見を有する画像を自動生成可能とするAIを構築しました。左図の左側が慢性萎縮性胃炎の特徴を表現した実際の胃X線画像、右側がAIにより生成された画像を表します。生成画像をAIの学習に用いることで、効率的にAIを学習可能であることを明らかにしました。

世界からの注目と技術展開

科学雑誌Scientific Americanにて紹介【リンク】

メディアダイナミクス研究室が開発したAIの学習に必要なデータ量の圧倒的削減を可能とする医用画像蒸留技術が、一般科学関連の世界最古の雑誌ScientificAmericanにて紹介されました。記事内では、「AIの民主化」を行うための次世代技術として、本研究成果が紹介されています。

他の医用画像への技術展開

メディアダイナミクス研究室で開発した基盤技術の横展開を行っています。オリンパス株式会社との共同研究では、内視鏡画像を対象とした研究、北海道大学医学部との共同研究では、PET/CT画像等を対象とした研究を行っています。

医療系国際会議への参加

先進的な研究を行うためには、医学の知識や分野動向も把握しておく必要があります。医療系国際会議にも積極的に投稿・参加しています。

これまでの連携先機関

  • オリンパス株式会社
  • 淳風会健康管理センター
  • 北海道大学医学部
  • 東京大学医学部
  • 兵庫県立医科大学
  • 国立病院機構函館病院
  • 宮城対がん協会
  • 山形県医師会
  • 社会保険滋賀病院
  • NTT東日本札幌病院

メディア掲載等

  • SCIENTIFIC AMERICAN, “How to Make Artificial Intelligence More Democratic,” Guang Li et al. (2021/01/02)【リンク】
  • 道新プラス道新受験情報2020大学・短大特集「AIってなんだろう?vol.5」.(2020/10/15)
  • 道新プラス道新受験情報2020大学・短大特集「AIってなんだろう?vol.3」.(2020/04/25)
  • 藤後廉,間部克裕,山道信毅,大泉晴史,小川貴弘,長谷山美紀,加藤元嗣,坂本直哉,“胃バリウム検査におけるAIによるHelicobacterpylori診断,
  • HelicobacterResearch,”vol.23,no.2,2019,先端医学社.(2019/11)
  • 平田健司,藤後廉,小川貴弘,長谷山美紀,志賀哲,“核医学におけるディープラーニングを用いた画像診断,画像処理,”INNERVISION.(2019/05)
  • 胃X線画像からピロリ感染を判断するAIも開発進む, 日経メディカル.(2018/03/10)
  • ピロリ菌感染 高精度で判別, 熊本日日新聞. (2015/02/11)
  • ピロリ感染を自動判別 橋の点検にも活用, 四国新聞. (2015/02/06)
  • 画像解析、高精度に, 岐阜新聞. (2015/01/29)
  • 画像解析、高精度に, 福井新聞. (2015/01/27)
  • ピロリ感染自動判別, 山陰中央新報. (2015/01/27)
  • 蓄積した画像データと照合 「経験と勘」を再現, 大分合同新聞. (2015/01/26)
  • ピロリ感染、自動判別, 中部経済新聞. (2015/01/26)
  • ピロリ感染、自動判別, 山梨日日新聞. (2015/01/24)
  • 画像解析 高精度の「目」, 中国新聞. (2015/01/23)
  • ピロリ菌感染判別、高速道の損傷発見, 福島民報. (2015/01/21)
  • 画像情報解析で「診断」, 信濃毎日新聞. (2015/01/19)
  • 進化する画像解析技術, 静岡新聞. (2015/01/19)