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北海道大学 情報科学研究科 メディアダイナミクス研究室 Laboratory of Media Dynamics

生物多様性規範工学との連携

生物の未知なる機能解明を促す、「バイオミメティクス・データベース」

長い年月をかけて進化した生物の体は、それぞれの生息環境に適応した機能が備わっています。その優れた機能を活用し、さまざまな工業製品の開発に利用する手法を「バイオミメティクス(生物模倣技術)」といい、近年は医療機器やスポーツ用品、建材など、幅広い産業に利用され始めています。

このような生物模倣技術は、かつて絹糸を真似て化学繊維のナイロンが開発されたように1930年代から行われていましたが、1990年代に電子顕微鏡が広く普及したことにより急速に発達しました。マイクロメートル(1000分の1ミリ)領域を扱うことができるようになり、生物のもつ微細構造を観察することができるようになったためです。

メディアダイナミクス研究室では、生物の微細構造から新機能の発見を支援する検索エンジン、「バイオミメティクス・データベース」の研究に取り組んでいます。このデータベースでは、自動的に類似する微細構造をもつ複数の画像を抽出し特徴を分析することが可能で、検索者は画面を自由に拡大・移動し、類似画像を容易に見つけることができます。これにより、生物に共通する優れた機能を推測するヒントを得るなど、検索者に“気づき”を与え発想を支援することが可能となります。

データベースには現在、国立科学博物館や北大総合博物館から提供された多種多様の昆虫や魚、鳥などの画像が蓄積され、その数はすでに万単位となっています。

このデータベースにより、例えば、科は異なるゲンゴロウとミズスマシによく似た突起構造があることが明らかになりました。分類学上は近縁関係でなく、生息環境もゲンゴロウは水中、ミズスマシは水面と違いもあるにもかかわらず、水に適応した共通構造に気づき、その機能を解明することで、新しい機能発見の可能性が生まれます。また、昆虫などの生物だけでなく、例えばそれに似た微細表面構造を持つ材料の画像と見比べることもできます。

バイオミメティクスは、生物学的モデルから得られる知見の抽象化や転移、応用を通して技術的問題を解決する学問です。「バイオミメティクス・データベース」は異なる分野に蓄積された異なる種類のデータを有機的に連携させるもので、生物学と技術分野が融合したバイオミメティクス分野での活用が期待されています。生物の機能を新しい素材や製品形状に活かし、製品開発に活かすことが、個人の“思いつき”ではなくデータベースを用いた体系的な手法で確立されれば、これからの新産業創出にも結びつくことでしょう。

 

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